【遺言のススメ】~遺言執行者とは?選び方で差がつく#10

遺言書を作成する際、その内容を確実に実現するためには「遺言執行者」を指定しておくことが極めて重要です。遺言執行者を定めていない場合や、どのように選ぶべきかについて十分な理解がないと、後々の相続手続きが複雑化する恐れがあります。

今回は遺言執行者について、詳しく解説していきます。

1. 遺言執行者とは

遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために、法律上の手続きや財産の管理・分配を行う役割を担う人です。遺言者が遺言書に明記した内容を忠実に遂行するため、遺言執行者の選任と遺言内で遺言執行者を指定しておくことが遺言書作成時の重要なポイントの1つとなります。

2. 遺言執行者を定めていない場合の流れとリスク

(1) 遺言執行者がいない場合の流れ

遺言書に遺言執行者が定められていない場合、遺言の内容を実現するために次のような流れが一般的です。

  1. 家庭裁判所への申立て:相続人や利害関係者が家庭裁判所に遺言執行者の選任を申立てます。
  2. 遺言執行者の選任:家庭裁判所が適任と判断した方を遺言執行者として選任します。相続人の中から選ばれることもあれば、第三者が選ばれることもあります。
  3. 遺産の管理・分配:選任された遺言執行者が遺言の内容を実行し、遺産を適切に管理・分配します。

(2) 遺言執行者を定めていない場合のリスク

遺言執行者を定めていない場合には、以下のリスクが生じる可能性があります。

  • 相続手続きの遅延:家庭裁判所の手続きを経て遺言執行者を選任する必要があるため、相続手続きがその分だけ遅れます。
  • 相続人間のトラブル:遺言執行者がいないと、相続人が遺産分配を巡って対立する可能性が高まります。遺言の内容が明確であっても、誰がその内容を実行するかで揉める可能性も高まります。

3. 遺言執行者の定め方

(1) 遺言執行者の選任方法

遺言執行者は、遺言書の中で遺言者が指定することが一般的です。遺言書に以下のように明確に記載することで、遺言執行者を選任できます。

  • 単独の遺言執行者を指定:例えば、「私は、長男である〇〇を遺言執行者に指定する」というように記載します。
  • 複数の遺言執行者を指定:複数の人を遺言執行者として指名することも可能です。その場合は、それぞれの役割分担や共同で行うことを明記します。

(2) 遺言執行者が複数の場合のメリット・デメリット

遺言執行者を複数選任することには、メリットとデメリットがあります。複数の遺言執行者の役割や注意点を原則と例外に分けて解説します。

1. 原則:共同での意思決定

複数の遺言執行者が選任された場合、その執行は、過半数で決めていくことになります。2人を選任した場合、全員が協力して意思決定を行う必要があることを意味します。

2. 例外:特定の遺言執行者に権限を付与する場合

例外として、遺言書に特定の遺言執行者に特定の事項を執行する権限を与える旨が記載されている場合、他の遺言執行者の同意を要せず、単独で執行することが認められます。

  • 特定の権限 例えば、特定の財産の管理や処分に関しては、特定の遺言執行者が単独でその権限を行使することができます。この場合、他の遺言執行者との調整が不要となり、迅速な執行が可能です。
  • 役割の明確化: 遺言書に明確に役割分担を記載しておくことが重要です。これにより、各遺言執行者がどの範囲で権限を行使するかが明確になり、誤解を防ぎます。


(3) 専門家を遺言執行者に選ぶメリット

遺言執行者に司法書士などの専門家を選ぶことで、次のようなメリットがあります。

  • 法的知識と経験の活用:遺言執行には法律的な知識が不可欠です。専門家は遺言の内容を正確に把握し、法的に適切な手続きを進めることができ、遺産の管理や分配がスムーズに行えます。
  • 中立的な立場での執行:ご親族が遺言執行者になると、感情的な対立が生じることがあります。専門家は第三者として中立の立場から対応しますので、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。
  • 時間と労力の節約:遺言執行は手間がかかるものです。専門家に任せることで、煩雑な手続きから解放され、時間と労力を節約できます。

4.遺言執行者を選任する際の注意点

遺言執行者を選任する際には、以下の点に注意することが重要です

  • 適切な人選:遺言執行者に適した方を選ぶことが、遺言の円滑な執行に直結します。信頼できるご親族や専門家を選ぶようにしましょう。
  • 健康状態と居住地の確認:遺言執行者が高齢の場合や遠方に住んでいる場合、職務の遂行が困難になる可能性があります。健康状態や居住地も考慮して選ぶことが大切です。
  • 事前了承:遺言執行者を選任する際には、事前にその方へご意向を伝え、了解を得ておくとスムーズです。万が一、遺言執行者が辞退すると、家庭裁判所に申立てを行って遺言執行者を選任してもらう必要が生じます。

まとめ

遺言執行者は遺言書の内容を確実に実行するために欠かせない存在です。

遺言執行者を定めていない場合には、相続手続きが遅延したり、相続人間でのトラブルが発生するリスクがあります。

遺言執行者を選任する際には、信頼できるご親族や専門家を選び、遺言書に明確に記載することが重要です。

適切な遺言執行者の選任により、相続手続きが円滑に進むだけでなく、相続人間の円満な関係も保たれることでしょう。

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