司法書士の小出亮です。
遺言書にはいくつかの種類があり、どの形式が最も適しているかは、遺言者自身のご希望、相続人の状況や財産の種類などによって異なります。
今回は、特に多くの方が利用する「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」に焦点を当て、それぞれのメリットやデメリット、活用方法について解説します。
ご自身の意思を確実に残すために、遺言書の形式選びはとても重要です。
今回は、遺言の種類やその違い、そして自分に合った遺言書を選ぶためのポイントについて司法書士の視点から詳しく解説します。
多く利用される遺言の種類として「自筆証書遺言」「公正証書遺言」という形式があります。
それぞれに特徴と法的な手続きが異なります。
まずは、各形式の特徴について詳しく見てみましょう。
自筆証書遺言は、その名の通り、遺言の内容をすべて遺言者が手書きで記す形式の遺言書です。
費用がかからず、比較的簡単に作成できることから、自分の意思を反映する手段として多くの方に選ばれています。
自己保管の場合、遺言書の存在と保管場所を信頼できる家族に伝えておくことが重要です。
また、作成時に法律の要件を満たしていない場合、無効となるリスクがあるため、専門家に内容を確認してもらうことをお勧めします。
ポイント
自筆証書遺言は、2019年より財産目録については自書しなくてもよいという例外が認められました。財産目録は、遺産の内容や明細を記載する部分で、これを印刷した書類や通帳のコピー、不動産登記簿の写しなどを利用して作成できるようになったのです。
ただし、財産目録が手書きでない場合でも、遺言者自身の署名と押印が必要です。
このように、財産目録をパソコンで作成したり、既存の書類を添付することができるため、遺言作成が簡易になり、財産が複数ある方も、法的に有効な自筆証書遺言を負担少なく作成できるようになりました。
また、2020年より、法務局に自筆証書遺言を保管する制度が導入されました。
この制度は、自筆証書遺言のデメリットであった「紛失・改ざんのリスク」を大幅に減らし、検認手続きを省略できる点で、利用価値が非常に高いといえます。
特に、手軽さと法的な安心感を両立したい方におすすめです。
公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を確認し、公証役場で作成される形式です。
遺言者が口述した内容を公証人が筆記し、その後、遺言者と証人2名が署名・押印を行います。
公証人が関与するため、法的に有効性が高く、公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配がない点が特徴です。
公正証書遺言は、財産の種類や相続人が多く、内容が複雑になる場合に特に有効です。
例えば、不動産や事業資産が含まれる場合や、相続人間で争いが起こりそうな場合は、遺言内容を公正証書にしておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
遺言書の形式の選択は、遺産の内容や相続人の状況、遺言者の希望に応じて異なります。
以下のポイントを参考に、どの形式が適しているかを考えてみましょう。
(1) 手軽さを重視する場合
手軽に遺言書を作成したい場合は、自筆証書遺言が適しています。ただし、法務局の保管制度を利用することで、法的な信頼性を高めることを強くおすすめします。
(2) 法的な安全性を重視する場合
法的な形式不備のリスクを避けたい場合や、複雑な財産分割を想定している場合は、公正証書遺言が最適です。
(3) トラブルを防ぎたい場合
相続人間の争いを防ぐためには、公正証書遺言を選択することで、遺言の法的効力を確実に保つことができます。
自筆証書遺言と公正証書遺言は、それぞれに特徴があり、状況に応じて適切な形式を選ぶことが大切です。
自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、保管方法や形式不備のリスクがありますが、法務局の保管制度を活用することで、その欠点を大きく改善できます。
一方、公正証書遺言は法的な信頼性が高く、複雑な財産分割や相続トラブルを防ぐためには最適です。
遺言書の形式を選ぶことは、未来のご家族への思いやりを形にする大切な一歩です。
しかし、どの形式が自分にとって最適なのか、何をどのように書くべきなのか、迷うこともあるでしょう。
私は司法書士として、多くの方々の遺言作成をサポートしてきました。その経験を活かし、あなたの状況やご希望に合わせたアドバイスをさせていただきます。
遺言書作成に関する不安や疑問があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
ご家族への大切な思いが、しっかりと形になり、未来につながるお手伝いをさせていただきます。一緒に安心できる遺言書を作成していきましょう。